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体は全部知っている/オムレツ

体は全部知っている (文春文庫)

体は全部知っている (文春文庫)

この1年、妊娠・出産で、自分の体について再発見するところが多かったので、なんとなくタイトルに惹かれて読んでみました。

すべて一人称の短編13篇、それぞれ異なる「私」のお話。
体、つまり理性や意志ではなく、ふだん意識していない感覚や欲求、忘れていたけれど脳におさめられていた記憶などが、本人の意図に関わらず、ひょっと出てきて、人生の岐路や重要な場面で意外な作用を発揮する、そんなストーリーばかり集められています。
意識よりも「体」に重点がおかれているせいか、描写される感覚が、五感のなかでもプリミティブな、嗅覚や触覚や味覚に関するものが多いと感じました。
また、「共感覚」というほどではないですが、景色に感触があったり、匂いに色が見えたりと、それぞれの感覚が交差する表現が多く、読んでいて、「体」の存在を強く感じているのに、同時に自分の体の輪郭がぼやけてくるというか、不思議な浮遊感におそわれる読み心地でした。
(※写真は本文と関係ありません)
13篇のなかで、とくに印象的だったのが、「おやじの味」です。
恋人から社内二股(サイテーだ)をかけられ失恋し、会社をやめてひきこもっていた主人公が、不倫がばれて(サイテーだ)家族と別居中の父親が暮らす山小屋に一緒に住みはじめ、立ち直る話。
「前向きで正しくて納得のいくことというのがひとつもない」仮住まいの家で、「生きていることに意味が」あると思える瞬間なんて、たまにでいいのだ、と、主人公の気持ちが楽になる姿が爽快です。
その別荘で父親がつくってくれる、「よく小さい頃に食べた」というオムレツ。
父親が料理する家は日本ではまだ少数派なんじゃないかと思いますが、お父さんがたまにつくってくれる料理というのは、その稀少感だけでもインパクトがあって、特別な味がすると思います。わたしの主人も料理はからっきしですが、たまーになにか作ってくれて、それを娘が「おやじの味」として将来なつかしんでくれたら、なんだかいいなあ。
小説にでてくるオムレツは「玉ねぎが入っていて甘く、ものすごくバターの味がして、食べると一日胸焼けがするが妙においし」い、とのことで、あらかじめバターを卵液に入れて焼くそうです。
モンサンミッシェルのオムレツみたいなやつ?

写真だけで胸焼けする!
作ってみたい!しかしそんなにバターを摂取するのは、授乳中の身分としては憚られます。乳腺が詰まる! しかも、バターは、今や高級品ですよねえ。
わたしの実家のオムレツは、玉ねぎとひき肉がたくさん入ったものが定番でした。
作り方を教わったことはないのに、よく食べていたというだけで、母の味を再現できます。まさに「体は全部知っている」。
カントリーガール風オムレツ。

スパゲティを三つ編みにしました。手がべたべたになりました。
こんなふうに、娘の気を引く練習ばかりしているわたしです。